朝にはなれない

やっと文章を書く気力が湧いた。

今朝までわたしはあまりにも渦中で、くるしみに暴れ出しそうだった。柄にもなく煙草をふかしたり、天井を見たりして時間をやり過ごしたが、あまりのくるしみに赤の他人をここへ引き摺り込もうとさえ思った。引き摺り込んで、私と同じようにくるしめば私はひとりじゃなくなるんじゃないかと、そんな妄想をした。妄想でよかった。

この感情を歌詞や文章に昇華できたらとも考えたが、実体験をもとに〜などという所謂「レポ」とはかけ離れたグロテスクなものしか書けないだろうと思った。それでも良かったのかもしれないが、私はとことん誰のことも傷つけたくなかった。

そんな時、もう何年も愛しているバンドの新曲を聴いて、こんなのは私の曲だと思った。きっと万人にそう思わせる曲だろう、もう百回は聴いた。一曲リピートで。はじめはただ涙が止まらなかった。泣いたら夜の灯りが信じられないほど綺麗に映った。私だけの景色だった。そうしていたら今度は、文章を書かねばならないと直感した。「変わらないこと」をあれだけ望んでいた私が、自宅に帰るこの道を、当たり前に動くこの足を、初めてゆるせなく思った。そしてそのことを記録しなければならないと思った。私は誰がなんと言おうと文筆家だ。文章を書く。書き続ける。私が私である。痛いね、痛くていい。気持ちいい。この痛さごと喰らい尽くして、私の腹の中に住まわせよう。