珈琲の香り

最近、喫茶店のマスターが言った「また来いよ」はその次「また来いよ、絶対。」になった。さらにその次はDVDを渡して「観たら返しに来てくれ」と言った。私の病状が悪いことにマスターは気づいているのかもしれない。死にたいと思ったことにも。もう死のうと…

朝にはなれない

やっと文章を書く気力が湧いた。 今朝までわたしはあまりにも渦中で、くるしみに暴れ出しそうだった。柄にもなく煙草をふかしたり、天井を見たりして時間をやり過ごしたが、あまりのくるしみに赤の他人をここへ引き摺り込もうとさえ思った。引き摺り込んで、…

情けない

絶望がやってきた。着替えもお風呂も歯磨きもままならない。心臓をぐっと掴まれてしまって横になるほかに何もできない。それでもお腹がすいたら近くにあるものを口に入れる、死にたいんじゃなかったのか。こんな姿になっても生きていようとする自分にうんざ…

曖昧に

事実を組み立ててできた家ってそんなに頑丈なものだろうか?事実に基づいた気持ちなどは、事実じゃなくてどちらかっていうと気持ちなのに、ひとは根拠とかそういうものにばかり目を向けたがる。確証がないと不安で仕方がないのなら、そう教えてほしかった。 …

たすけての四文字

たすけての四文字が送れない。 明日の朝は早いから、眠気覚ましに珈琲を買っていこうかな。そういう思考と並列して、たすけての四文字が頭をよぎる。でもこうも思う。他人にゆだねて、なにになる? 私はなんでも自分が背負うことで解決しようとする節がある…

九月

またゲームセンターでお金を使ってしまった。ここのところ毎日通っている。やめなくちゃと思っているのにやめられない。淋しい。 最近の浪費は本当に深刻で、今月いくら使っているのかわからない。「日常生活力」の判定がかなり悪かった。回復する兆しが見え…

主演

君には、いつか羽が生えるかもしれない。 行きつけの喫茶店のマスターは私にそう言った。客が少なくて暇だからと私の向かいに座って珈琲を飲んでいた。 私は喫茶店に行きたいときもあれば、行きたくないときもある。マスターに会いたいときもあれば、会いた…

魔法

哀しみの根源を飼って、幸せになりたい。 心に空いた大きな穴を抱きしめて、世界の何よりも信用している。 いつかこの気持ちを完成された表現にしたいと思っていたのに、とうとう私には書けなかった。 「とうとう書けなかった」と書くことでしか、伝える手段…

造作もない

風呂の湯に頭から突っ込んだ。 ほとんど衝動だった。 途中で全裸はいやだと思い直して、やめた。 そのあとは脱衣所でバスタオルだけかぶって、しばらく土下座の体勢でいた。なにをやっているんだろうと思った。上の階から聞こえるうめき声に吐きそうだった。…

浅い呼吸

会社を辞めます。こんな簡単な言葉がどうしていつまでも言えないんだろう。 これ以上、迷惑をかけられません。 これ以上、わたしは、 わたしは。 恥ずかしい話だけれど私はこれまで、自分はちょっと人より優れているんじゃないかと本気で思っていた。 暑いと…

やさしく殴って

その場の幸せだけ見て歩いてきた だからこんなことになったんだわ、 何してたってちょっとだけ寂しいのは自分勝手に生きてきた証拠で、 他人を責めたところで気が晴れないのはわかってるけど、思いきり責めて誰かにとって最低になりたかった 私たちに普通は…

四月になったら、職場の仲間の半分以上が入れ替わる、去年の春もそうだった。 入って間もないうちに先輩が誰もいなくなった。私はまだ分からないことだらけだったのに(今もだが)突然教える立場になってしまって、うまい教え方を模索する暇もなく必死にやって…

満ち足りた栄養

今年に入って、病院に通うのをやめた。 回復したからなのか、治すことを諦めたからなのか 単に通うのが面倒になっただけかもしれない。 家族に心配をかけたくなくて 成人するまでは病院には行かないと決め、気が狂いそうになる中騙し騙しやってきたそのツケ…

かわいそうに

海の中に花が咲かないのって、天は二物を与えず みたいなことなんだろうか。もし海に花がたくさん咲いたら あまりに美しくて、ひとは無理にでもそこに移住しようと考えたかもしれない。 わたしはとっくに海に身投げしているかもしれない。 自分の浅はかさに…

気まぐれ水流

伝えたいことはたくさんあるのに、 わたしは臆病だった 自分の人生にタイトルをつけるのが怖くて ひとりで過した 雨の日、客のいない喫茶店で 見えない何かに怯えて暮らすのはもうやめようと決めた。 それは 覚悟をきめる というようではなく もっとずっとナ…