主演

君には、いつか羽が生えるかもしれない。

行きつけの喫茶店のマスターは私にそう言った。客が少なくて暇だからと私の向かいに座って珈琲を飲んでいた。

私は喫茶店に行きたいときもあれば、行きたくないときもある。マスターに会いたいときもあれば、会いたくないときもある。マスターだって誰の顔も見たくないようなときがあるだろうに、毎日他人のために珈琲を淹れている。それってとても不平等だ。だから私たちは対価としてお金を支払っていて、マスターはそれを受け取ることを仕事にしている。利害で成り立っている。わたしは仕事とはなにかをかんがえる。自分には、こういう関係しかあとに残らないのだろうか。

ひと と わたし の間にはいったい何が発生しているのか?私が最近考えていることって全部ここに尽きるかもしれない。哲学的なこと考え出すと病むぞと母親に言われたけど、今更遅すぎる。考えなくなったら、それは私じゃない。

 

私は朝起きてまずがっかりする。頭が痛くて悪寒がする。次にそんな自分にがっかりする。手にべったりと血が付着したみたいな気分になる。そして、そんな自分の感性の豊かさに恍惚する。

マスターは、みんな普通が大好きなのに真ん中は少しずつ減っていて、いつか上か下かになる と言った。私は上にいたいとは思わなかったし、下でもいいとも思わないけど、羽はほしいと思った。私は誰だ。

一人で生きていくことができないのはなんでだろう。みんなの言う真ん中ってどこだったんだろう。ごろごろだけしてたら生きていけないのはなんでだろう。なんで、なんで?わたしは、なんで で出来ている。